始まりはヘムスから。

EXPO写真

電力自由化EXPOでは弊社の出展ブースへ大勢のお客様に来場いただき、誠にありがとうございました。お陰様で多くのお客様から貴重なご意見をお聞かせいただくことができました。今後のサービス展開に反映させて頂きます。

さて、今回は大規模HEMS情報基盤整備事業でご一緒させて頂いている福岡県みやま市もEXPOに参加してもらい、みやま市が取り組んでいる電力サービスの内容を自治体の皆さん自ら紹介していただきました。電力小売自由化を自治体の視点で来場された方々にお話しして頂きました。

大規模HEMS情報基盤整備事業では、みやま市民2,000世帯にHEMS機器を設置して、その電力データを利活用することで様々な生活関連サービスを提供する実証事業を行っております。

福岡県みやま市は、市民数が約40,000人、世帯数約14,000世帯という小さなまちで、主要産業は農業、高齢化が進む典型的な地方自治体であります。この地方のみやま市でHEMS機器を2,000世帯に設置して、電力データを利活用しながら地方ならではの地方に必要とされる生活関連サービスを実証する事業ですので、これまで悪戦苦闘の日々が続きましたし、今もそれは続いております。

まず弊社とみやま市が始めに行ったことは、HEMSをヘムスと書き換え、市役所に垂れ幕を掲げることでした。HEMSはそもそもHome Energy Management Systemの略語ですので、それを更にカタカナでヘムスに変換してしまったのでは、言葉の意味が全く伝わらないと思いましたが、多くの市民はHEMSを知らないし読めませんので、カタカナのヘムスにすることから私達はこの事業をスタートすることになりました。そして私達の前途多難の予感が直ぐに現実のものとなりました。

みやま市の世帯数はわずか14,000世帯で、ほとんどの市民がHEMSを知らない。その条件下で全世帯数の約15%にあたる2,000世帯にHEMS機器を設置して市民にサービスを提供するのですから、まずはモニター家庭を募集するのが大きな障壁でした。

連日連夜、地域の公民館をお借りして10人程度のミニ集会を開いておじいちゃん、おばあちゃんに説明するも、一向にヘムスを理解してくれません。(当然といえば当然ですが)

小学校や中学校にお願いして、子供達にHEMSモニター宅募集のパンフレットを家庭に持ち帰ってもらい、お母さん、お父さんに読んでもらうようお願いするもモニター数が増える兆しがいっこうに見えません。

まちの消防団、地元企業などを訪問しモニター募集のお願い、秋の収穫祭でもHEMSを大々的にPRするも効果は薄く時間ばかり経過し、思うような募集状況には程遠い状態が続きました。

HEMSの電力データを利活用した生活関連サービスを知ってもらうため、スマート住宅のモデルハウスを開設して市民に体験してもらう活動や、個別にご家庭を日夜訪問してHEMSがある生活をPRしてきました。

そのような募集活動を1年近く精力的に続けた結果、ロングテールの逆の現象が発生し、ある時を境に申込み数が一気に増加して、今では2,000世帯を優に超えるご家庭がモニター宅になっていただいております。

地方の皆さんは市役所が行っている事業といえども最初のうちは新しいことには抵抗感が強く、なかなか協力してくれませんでした。それではなぜ、地方のまちで2,000世帯以上のご家庭がHEMSのモデル事業に参加してくれたのでしょうか。

その答えは、みやま市の職員さんが昼夜、休日を問わずHEMSを市民にPRしてくれたこと。HEMSを設置するまちの電気工事組合の皆さんがHEMS機器の設置工事をしながら、ご家庭にHEMSとは何かを説明してくれたこと。みやま市長も先頭に立ってHEMSの説明会で市民の皆さんにお願いしてくれたこと。そしてHEMSを先行して取り付けたご家庭の方々が、知り合いの家庭に口コミでHEMSをPRしてくれたこと。

要するに自治体、市民、まちが一体となってこのHEMSプロジェクトに参加したからこそ、多くの市民が賛同してくれたのだと思います。このパッションこそが地方に活気をもたらせ、地方自らが変革する、地方創生の源だと思います。

私達はHEMSプロジェクトを通じて電力自由化が地方にもたらす意義、本質を知ることができました。地方における電力自由化は競争ではなく共創です。電力自由化により地域がエネルギーを身近なテーマとして取り組むことが可能になります。自治体、市民、地元企業、金融機関、電力会社、再エネ発電会社、サービス会社など、地域の皆さんがそれぞれ自発的、積極的に電力自由化に係わり融合することでまちが動き始めました。

電力自由化で自分達の暮らしがどう変わるのか、自分達が暮らすまちをどうしたいのか、その為に自分達は何をしなければならないのか、電力自由化はこのことを市民や地元企業、自治体の職員が一緒に考え、行動するきっかけになりました。

また地方では、スマートシティーの定義が異なると考えております。市民全員でお年寄りを見守る。子育て家庭をサポートする。我がまち自慢の農産品を全国、世界の人々に食べてもらうため農業を盛り立てる。そういうコミュニティー力の強いまちがスマートシティーだと思います。

電力自由化で、みやま市という地方自治体でもこのスマートシティーを創るアイデアが数多く出てきました。2016年の電力小売自由化に向けて、みやま市独自の電力サービス事業を立ち上げ、みやま市ならではのスマートシティーを創り、その経験をみやま市から九州に、そして全国に広げていきたいと私達は考えております。

ぜひ、全国の自治体の皆様もみやま市に視察にいらしてください。皆様のまちに相応しいスマートシティー創りのヒントがあると思います。

カテゴリー:スマートエネルギー