最先端技術で建築現場のデジタル化を推進する -深圳BIMチーム 森内さん・龍明亮さんインタビュー

最先端技術で建築現場のデジタル化を推進する -深圳BIMチーム 森内さん・龍明亮さんインタビュー

こんにちは。エプコ広報部の佐藤です。6月22日にお知らせしたとおり、深圳BIMセンターが拡張・移転しました。

ということで今回は、BIM(Building Information Modeling)技術開発及び事業推進を行っている深圳BIMチームの森内さんと現地リーダーの龍明亮(ロンミンリャン)さんにインタビューを行いましたので、ご紹介いたします!

BIM(Building Information Modeling)とは?

最近何かと耳にすることが多いBIM(Building Information Modeling)。まずはBIMについて森内さんにお話を伺っていきたいと思います。

建物を構成するパーツに「情報」を持たせることが出来る

広報:森内さん、今回は「BIM」をテーマにお話していきたいと思いますが、そもそもBIMとはどういうものか、教えていただけますか?

森内:BIMとは、英語でBuilding Information Modelingで、直訳すると「建築情報模型」という意味になります。最大の特徴は「情報」の部分です。実は、BIMで表現されているすべてのものが1つ1つパーツ(ファミリ)で構成されています。ファミリも「机」や「扉」といったものからビス (ネジや釘)の1本1本迄、細部にわたり作成することが可能です。

3D CADとの違い 建築現場での活用方法が多様

広報:設計の情報に細部に至るまでの情報をもたせるということがBIMのポイントですね。これまで3Dモデル(3D CAD)という技術があったと思いますが、BIMとの決定的な違いは具体的にどのようなものですか?

森内:今までの3Dモデル技術は分かりやすくいうと、粘土をこねて形だけを作っているのに対して、BIMはレゴブロックを組み立てているイメージですね。BIMを用いると、使用している部品の集計や組み上げ手順のシミュレーション、材料の現場搬入時にどの程度の場所が必要になるかの検証等、様々な用途で活用することが出来ます。

▲組立動画の一部。使用している部品情報や組み上げ手順を確認できます。

広報:日本の建築現場では2Dの図面が今は主流になっていると思いますが、この点に関して何か補足はありますか?

森内:もちろんBIMから2Dの図面を出力することもできます。出力する際に、BIMの修正を行えば、自動的に2D図面に反映されるので、図面や資料によって内容の相違があるといった問題は発生しません。

BIM技術で出来る5つのこと

広報:BIMは建物のパーツに情報を持たせることが出来る点や3D CADとは、建築現場での活用方法が多様である点で決定的に違うということがわかりました。ここからは、BIM技術で出来ることを伺っていきたいと思います。

顧客提案への活用 :BIMからパースや動画を作成できる

森内:まずは1点目、お客様への提案でBIMモデルを活用することができます。具体的には、BIMからパースや動画を作成することができ、パーツを調整すればサイズや色、材質等の変更も可能です。

▲深圳BIMセンターの、オフィス内のBIMモデル。サイズや色、材質など細かい情報を持っています。

広報:動画にすることで、具体的なイメージが湧きやすくなりますね。パーツの「情報」を持っていることで調整がききやすいという点もポイントかなと思います。

設計業務への活用:配管の干渉がBIMモデルでチェックできる

森内:2点目、配管の干渉がBIMモデルでチェックできるという点です。

広報:設計において、部材同士が重複して存在していないか確認する作業のことですね。具体的なメリットはどのような点にありますか?

森内:2Dの図面だと気づきにくい配管の干渉チェックを3D上で行うことが出来るので、干渉部分があればそれが一目瞭然になります。また、BIMモデルと各図面は連動しているので、調整した結果相違が出てしまった・・・ということはありません。さらには、今まで現場で加工していた材料などを、BIMモデル上で確認することで、事前に工場で加工する事ができます。

広報:施工現場の業務の効率化にもBIMモデルが活用できるのですね。また、干渉チェックが行いやすくなることによって設計品質もより高くなりますね!

▲組み立てシミュレーション動画の一部。BIMモデル上で視覚的に漏れなく干渉チェックができます。

積算業務への活用:見積を簡単に出力できる

森内:3点目は積算業務にもBIMを活用することができるということです。

積算とは、設計図や仕様書をもとに建築にかかる工事費の見積もりを算出することをいいます。

森内:具体的には、パーツに詳細な情報を持たせることで、見積を簡単に出力することができるようになります。また、それぞれの部品が情報を持っている為、プレカット、プレファブ化も容易です。

プレカットとは、現場での施工前に工場などで原材料を切断したり接合部の加工を施しておくことで、プレファブ化はプレカットをシステム化・ユニット化することです。

広報:ここでも「情報」を活用するのがポイントですね。積算業務の効率化も図ることが出来そうです。

施工管理への活用:事前に施工シミュレーションができる

森内:4点目は施工管理への活用です。施工する前、事前に材料を置く位置や、重機との干渉をチェックする事ができます。さらに、2Dではわからない配管の交差等の施工方法も確認することができます。

広報:事前に施工シミュレーションが行えるということですね。トラブル抑止はもちろん、事前に細かく情報を得ることが出来るので、施工現場において様々な活用方法がありそうです。

▲重機で材料を様子を釣っているBIMモデルで再現。細かいチェックが可能です。

アフターメンテナンスへの活用:提案品質向上に貢献

森内:アフターメンテナンスの面でも、BIMを使えば細かい品番や製造日などが分かるため、適切なタイミングでのアフター提案ができ、現場に行かなくても現場の状況を事前にチェックして準備することで出戻りをなくすことができます。

森内:さらに、BIMを活用したメンテナンス動画を作成し品番と結びつけることでお客様自身で修理方法等を確認していただく事もできます。

▲例えばトイレタンクのお手入れ方法を動画で確認することができます。

広報:ここまででBIMでできる5つのことを伺ってきました。BIMを活用することで「顧客提案」「設計」「積算」「施工管理」「アフターメンテナンス」と建築現場における、あらゆるフェーズでメリットを受けることが出来る、そんな技術だということが良くわかりました。

BIMの今後の展開

森内:まだまだ日本では発展途上な分野ですが、中国ではすでに建築物の確認申請の際にはBIMモデルの添付が必須となっています。建築業界のスタンダードな技術になっていくと思います。

広報:そうですね。今後の展開について詳しくお聞かせください。

森内:まずは世間的な展開から。まず、大手ゼネコンでは大規模プロジェクトとしてBIMが利用されています。また、ハウスメーカーでも導入が進んでいくと考えられます。さらに、国土交通省でもBIMガイドラインが制定されておりBIM導入の際の方針がまとめられています。

広報:エプコとしてはどのような展開になりますか?

森内:エプコとしてはBIM導入により新規顧客の獲得に加えて、既存顧客へ新たな付加価値の提供をすることができると考えています。依頼を請け負うだけではなく、エプコから発信を行える、そんな新しいサービスにしていきたいです。また、タイのSCGグループとの共同事業や中国国内での新規業務の開拓も検討しています。

広報:世間的な展開もそうですが、エプコが培ってきた技術を活かしてBIMの事業拡大を目指していきたいですね。

深圳BIMチームについて

様々なバックグランドを持つスタッフが協力し合う環境

広報:現在エプコでBIM業務に携わっているのは東京BIM推進室と中国の深圳BIMセンターです。今回は深圳BIMチームのご紹介というところで、どんな方がいるチームですか?なかなかリアルで感じ取ることが難しいところなので、是非おしえてください!

森内:深圳BIMセンターのメンバーは日本からの駐在員や開発担当を入れて31名です。長くエプコに在籍した後に転籍されてきた方や、BIMの技術者として中途採用した方など、年齢も性別も経験も、個性豊かな多様性のあるチームです。

森内:大学で建築やBIMを勉強していた新入社員の説明を、入社17年目のスタッフが一生懸命聞いている姿は、最近の深圳エプコでは見ることが出来なかった光景です。意見交換も積極的に行われていて、非常に明るいチームです。

広報:様々なバックグラウンドを持った皆さんが一緒に一つの目標に向かって邁進していく、そんなチームなのですね。言語などの壁はどうやって乗り越えているのですか?

森内:私も少しは中国語が分かるようにはなっているのですが、複雑な内容になると情報の齟齬があると怖いので、文字や画像で指示を出したりしています。さらに複雑な内容に関しては通訳の方の力を借りています。

広報:龍明亮さんはいかがでしょうか?

龍明亮:社歴の長いスタッフは日本とのやりとりの経験もあるので、文字での簡単なやりとりであれば問題なくできます。難しい内容は通訳の方の力を借りています。

BIMチームの具体的な業務内容

広報:ここからは龍明亮さんにメインでお話を伺っていきたいと思います。簡単にご経歴を伺ってもいいですか?

 龍明亮:エプコには2010年に入社し、9年間大手ハウスメーカー様の給排水図面の作図に携わってきました。チームリーダーを経験した後、2019年2月にBIMチーム立ち上げメンバーとして参加しました。

広報:現在はどのような業務内容を行っているか、具体的に教えていただけますか?

龍明亮:主に4つあります。

  1. タイのSCG様との共同事業を行っています。SCG様向けに作成したパーツの数は1500個近くあり、品質に関しても非常に高く評価していただいています。
  2. 日本国内のハウスメーカー様からBIMの作成業務を受託しています。東京側のBIM推進室と協力し、日本の建築ルールも勉強しています。
  3. 各種BIM動画の作成業務です。住宅のウォークスルー動画だけではなく、施工手順の動画や設備機器のメンテナンス動画等を作成しています。
  4. CAD2BIMプロジェクトです。これは、今までのエプコで作成した2D図面を自動でBIM化するプロジェクトになります。手動で作成するのに比べたときに、80%~90%の時間短縮を目標に、エプコ独自のシステム作りを研究しています。

広報海外の展開ももちろん、日本国内でも着々と展開する準備を整えているということですね。BIM動画は施工現場品質の向上に大きな貢献ができそうです。また、業務効率化という点も大きなポイントですね。

チームリーダーとしてのお仕事

広報:リーダーとしてお仕事をされていると思いますが、チームリーダーとしてどのような業務を行っていますか?

龍明亮:チーム全体の管理をしつつ、給排水時代の経験を活かし、CAD2BIMプロジェクトの開発案等を企画・取りまとめをしています。また、先ほど触れたタイとのやり取りのフロントとして、現地へ駐在している駐在員とのやり取りも行っています。

▲深圳BIMチームリーダーの龍明亮さん

広報:幅広い分野で活躍されているのですね!龍明亮さんから見たチームはどのような感じですか?

龍明亮:チームを立ち上げた当初は3人しか(!)おらず心配もありましたが、今では30人近いチームになりました。目の前の業務だけではなく、積極的に学習をしたり、当初は研修を受ける側だったメンバーが研修をする側になったり、一人一人が意欲をもって積極的に活動しています。森内さんも言っていましたが、コミュニケーションも活発な非常に明るいチームです!

広報:最先端技術のプロジェクトチームとして1人1人がプロ意識の高い、専門集団なのですね。良い雰囲気ということがわかり、とても良かったです。龍明亮さん、最後にまとめの一言を!

龍明亮:チームが発足して約1年半、まだまだ成長の余地があると思いますが、エプコが社会に貢献できる新しい価値を生み出すためにこれまで以上に精力的に活動していきたいとおもいます。是非、応援していただけると嬉しいです。

広報:龍明亮さん、森内さん、ありがとうございました!6月22日にお引越ししたばかりということで、新しい環境でさらに活躍していくBIMチームを宜しくお願いします!

▲深圳BIMセンターの内装。広々としてきれいなオフィスになっています。ちなみにレイアウトは深圳BIMチームが行ったそうですよ!

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